利用課題
中性子と放射光の連携利用によるタンパク質反応プロセスの解明
タンパク質は生体内化学反応を担う生体高分子で、その構造と機能の解明は、生命科学の発展に貢献するだけでなく、タンパク質そのもののバイオ材料や医 薬品としての応用にも寄与します。これまで放射光を利用したタンパク質のX 線構造解析で決定する原子レベルの立体構造は、生命現象の理解に大きく貢献してきました。
一方、水素はタンパク質を構成する原子のおよそ半分を占め、その機能や物性に極めて重要であるにもかかわらず、従来のX線構造解析による決定には技術的な困難がありました。また、水素原子の可視化に有効な中性 子線解析においても、限られた利用機会や低い分解能のため、タンパク質の構造・機能解明には十分な成果が得られているとは言えません。
そのような状況で、J-PARCにおけるタンパク質用中性子ビームラインの充実、中性子線と放射光X線との連携利用による高分解能解析技術基盤の整備が、強く求められています。
ここでは、水素原子の構造情報や分子の電子状態が機能解明に重要な光合成や呼吸に関わるタンパク質や創薬ターゲットとなるタンパク質を研究対象に、中性子と放射光という二つの量子ビームの連携利用に基づくタンパク質の高精度解析の技術基盤を確立することを目指します。