イーアールエル(ERL)
エネルギー回収型リニアック(Energy Recovery Linac)の略。次世代(第4世代)放射光光源計画の一つ。非常に輝度が高い光(X線)が得られる。電子ビームがリングを一周した後、そのエネルギーを回収して次の電子ビームの加速に利用する。
現在、世界中で使われている放射光はリング型の加速器を使っている。しかし、リング型では電子が軌道を何度も周回するうちに、電子ビームがぼけてくるため、輝度を小さくしたりパルスの長さを短くしたりするには限界がある。
ERLは、その限界を打ち破る有望な放射光源加速器の一つである。リニアックから出た電子ビームを1回だけ円形の軌道で周回させ、再度線形加速器に戻すときに加速時とは180度ずれた位相(波の山と谷が打ち消しあう場所)になるようにして減速させる。このときに電子の持っていたエネルギーは回収されて次の電子の加速に使われるため、エネルギー回収型と呼ばれる。電子は長円形の軌道を走るため、リング型放射光と同様に多くのビームラインを作ることができる。同時に、電子ビームが軌道をまわるのは1回だけなので、ビームがぼけることはなく、高輝度と短パルスが実現できる。
限界を打ち破るもう一つの方法は、直線型の線形加速器(リニアック)を基本にした放射光源で、その代表的なものは日米欧で開発が進められているX線自由電子レーザーである。ERLはピーク輝度という点ではX線自由電子レーザーに劣るものの、X線の総発生量でははるかに勝る。また、多数のビームラインに高輝度・短パルスという先端的な光を供給できるため、物質科学や生命科学の高度かつ多様なニーズに対応することが期待されている。