光・量子融合連携研究開発プログラム
Photon and Quantum Basic Research Coordinated Development Program by MEXT
  • あ行
    イーアールエル(ERL)

    エネルギー回収型リニアック(Energy Recovery Linac)の略。次世代(第4世代)放射光光源計画の一つ。非常に輝度が高い光(X線)が得られる。電子ビームがリングを一周した後、そのエネルギーを回収して次の電子ビームの加速に利用する。
     現在、世界中で使われている放射光はリング型の加速器を使っている。しかし、リング型では電子が軌道を何度も周回するうちに、電子ビームがぼけてくるため、輝度を小さくしたりパルスの長さを短くしたりするには限界がある。
    ERLは、その限界を打ち破る有望な放射光源加速器の一つである。リニアックから出た電子ビームを1回だけ円形の軌道で周回させ、再度線形加速器に戻すときに加速時とは180度ずれた位相(波の山と谷が打ち消しあう場所)になるようにして減速させる。このときに電子の持っていたエネルギーは回収されて次の電子の加速に使われるため、エネルギー回収型と呼ばれる。電子は長円形の軌道を走るため、リング型放射光と同様に多くのビームラインを作ることができる。同時に、電子ビームが軌道をまわるのは1回だけなので、ビームがぼけることはなく、高輝度と短パルスが実現できる。
     限界を打ち破るもう一つの方法は、直線型の線形加速器(リニアック)を基本にした放射光源で、その代表的なものは日米欧で開発が進められているX線自由電子レーザーである。ERLはピーク輝度という点ではX線自由電子レーザーに劣るものの、X線の総発生量でははるかに勝る。また、多数のビームラインに高輝度・短パルスという先端的な光を供給できるため、物質科学や生命科学の高度かつ多様なニーズに対応することが期待されている。


    か行
    加速器

    電気を持つ粒子に電磁場を使って光速度に近い速度を与える装置。円形と直線型とに大別される。
     加速器は、本来、素粒子や原子核の研究のために開発されたものだが、現在ではさまざまな用途に用いられている。少し前までテレビの主流であったブラウン管は、超小型、低エネルギーの電子加速器である。最近では、ガンの放射線治療用に小型の電子加速器を備える病院も増えている。さらに、陽子加速器、重粒子加速器によるガン治療も試みられ始め、その効果が期待されている。また、医療診断で重要な役割を果たすポジトロン断層法(ポジトロンCT、PET)の撮影に必要な放射性トレーサーは、病院内に設置した加速器でつくられている。今後も加速器の応用範囲はますます広がっていくと考えられる。

     
    高輝度

    光の性質を評価する際に用いられる用語。一定の条件に基づき、量子的に特定される密度の濃い光を当て、望むものを鮮明に検出できる現象を指す。

     
     
    高品質ビーム

    高品質ビームとは、スピン(右巻き、左巻き)や飛ぶ方向など、使用目的に沿って意図通りの性質が整えられたビームの状態のこと。レーザーに電子ビームを衝突させてできるX線(量子ビーム)はレーザーの性質を受け継ぐため、その性質を揃えることが可能。精度を上げるべく本プロジェクトにて研究開発が進行中。

     
     
    小型高輝度光子ビーム発生装置

    本プロジェクトに沿って、軟X線、硬X線の両X線を大量につくり出す装置。これにより、原子のミクロな状態、高分子におよぶ状態まで確認することができる。

     

    さ行
    創薬

    小型高輝度光子ビーム発生装置によって高分子状態を調べることができるため、人間のゲノム状態を的確に診断し、薬の作用も確認することができる。


    た行
    大強度(大電流)

    高品質であると共に、研究装置の高性能化を実現するために必須なのが、より大強度(大電流)な電子ビームを生成する点。

     
    超伝導高周波加速器

    超伝導空洞を使用。常伝導の高周波加速器と比較した場合、電力効率が著しく優れる。大強度のビームを加速するのに最も重要な装置。

     
    超伝導空洞

    液体ヘリウムで絶対零度(-273.15℃)に近い状態へと設定できる空洞。空洞が冷されることで物質の抵抗がほぼなくなり、一度電流を流すとエネルギーロスがない状態で電流が流れ続ける。


    な行
    軟X線、硬X線

    硬X線は原子の状態を見るのに適したX線。一方、軟X線はその原子が集まった状態を調べるのに適したX線と言える。空気中で硬X線が吸収されにくいのに対し、軟X線は吸収されやすいものの人体にも吸収されやすいという危険性を持つ。だが同時に人体の細胞を調べる道具として最も有効な方法ではある。

  • は行
    バンチ

    電子ビームは、バンチと呼ばれる電子の集団が一定の間隔で並んでできている。

     
    ビーム

    ビームとは、粒子のカタマリ、または粒子のように振舞う波長の短い波が、細い流れとなって並進し、ちょうど光線のようにひも状に見えるもののこと。互いにはほとんど衝突しない。 高エネルギー実験で衝突させるビームは非常に小さい。KEKB加速器の電子ビームは高さ2ミクロン、水平110ミクロン、長さ7ミリのサイズだ。ひとつのカタマリに580億個の電子がつまっており、それが約1400個の列(バンチ・トレイン)となって電子リングを回る。国際リニアコライダーでは、高さ5ナノ、水平100ナノ、長さ130ミクロンの電子ビームを目指している。粒子や波の名前や種類を冠して、「電子ビーム」「陽電子ビーム」のように呼ばれる。レーザーやX線等の放射線と個運動されることが多く、「?線」と訳されることもあるが、「アルファ線」「ベータ線」「X線」「光線」等の「線」は放射線を表している。  

     
    ビーム衝突技術

    レーザーパルス蓄積装置内部の電子レーザーは光速で移動する。光の塊であるレーザーも高反射率のミラーによって光速で反射。共に絞り込まれミクロンのサイズなため、タイミングも含め衝突させる難易度は高い。現在も衝突はしているが、その精度を上げることで、より効率的にX線をつくることができる。常に完全な衝突が実現できれば、さらに様々な応用が可能に。

     
     
    小型高輝度光子ビーム発生装置

    本プロジェクトに沿って、軟X線、硬X線の両X線を大量につくり出す装置。これにより、原子のミクロな状態、高分子におよぶ状態まで確認することができる。

     
     
    放射線治療

    放射線の医学的利用法。放射線療法ともいう。加速器を使ったX線や電子線による治療装置、コバルト60を使ったガンマナイフ、サイクロトロンによる陽子線治療、シンクロトロンによる重粒子線治療などがある。 放射線は100年以上にわたって、安全で有効ながんの治療法として使われており、米国ではがん患者の約2/3が、日本では約1/4が放射線の治療を受けている。放射線治療は、細胞に損傷を与えることで作用する。がん細胞に放射線を照射うすると、細胞内のDNAに損傷を与え、がん細胞が増殖できないようにできる。がん細胞は自ら損傷を修復できないため死滅する(正常細胞も放射線によって損傷を受けるが、自ら回復することができる)。
    従来の手術によるガンの切除と比較しても、生存率は同程度との統計があり、ガンの種類によって、放射線治療と手術、またはその両方の組み合わせによる治療が行われている。また、がんの進行をできるだけ遅らせるために、放射線治療が行われることもある。技術の進歩により、正常細胞にほとんど影響を与えない治療方法も確立されつつあることから、患者の肉体的、精神的負担が軽減できるとともに、QOL(クオリティ・オブ・ライフ:治療後の生活の質)を維持できる治療法として注目されている。
    国内の放射線治療施設は約600施設あるが、放射線治療専門医は400人に満たない。欧米の水準に比べると、診療放射線技師(学会などの認定を受けた場合、特に「放射線治療専門技師」と呼ぶこともある)や医学物理士、線量計算士などの専門家の数が基準に達している施設はわずか数施設にとどまっている。

     
    放射光
    加速器によって高いエネルギーを与えられた電子などの電気を持った素粒子が磁場を横切り曲がる時に出す指向性の高い電磁波のこと。産業的に応用範囲が広い。
    光速に近い早さで飛んでいる、加速器中の高エネルギー電子等の荷電粒子が磁場によって曲がる時に、電磁波を放射する現象が起きる。これを「シンクロトロン放射」と呼ぶ。電磁波はシンクロトロン放射以外の方法でも発生するが、シンクロトロン放射によって発生する電磁波を「放射光」と呼んでいる。「光」と呼ばれているが、実際は、加速器でつくられるものは赤外線からX線、自然界に存在するものでは電波からγ線の範囲のものがある。
    放射光は、円形電子加速器を使った素粒子物理実験用で見つかった現象。放射光を出す事はエネルギー損失を意味するので、見つかった当時は実験の邪魔になる存在であった。しかし発見後直ちに放射光を用いて物質を観察する事が、物性物理や材料の研究に極めて有効である事が理解された。当初は素粒子実験用の加速器に同居する形で、放射光の利用がなされていたが、1970年代からは、放射光専用に設計された加速器が登場し、今では放射光はますます活躍の場を広げている。
    放射光は、様々な用途に使われている。例えば、放射光で原子(元素)の構造を詳しく調べて、自動車用排ガス浄化触媒などの触媒材料が開発されている。試料の元素分析は、材料科学、環境科学、医学、生物学、考古学、科学鑑定などの応用につなげられている。また、物質の表面や内部の電子状態を調べることによる、先端材料やデバイスの開発や、結晶構造を詳しく調べることで、タンパク質の構造を解析、新薬開発に応用している。また、放射光を用いてX線撮影すると通常のX線より格段に解像度の高い映像が得られるため、微小な隕石の構成物質の分析や初期ガンの発見にも利用されている。

     
    放射線

    一部の不安定な原子核は、エネルギーを放出して安定な原子核になる。このとき放出されるエネルギーが放射線である。放射能と混同されることが多いが、放射能は物質が放射線を出す能力、または能力を出す性質のこと。代表的な3種の放射線は透過力の小さな順に、α線、β線、γ線と名づけられている。
    放射線は、一般的には電離性を有する高いエネルギーを持った電磁波や粒子線のこと。ただし、中性子線は高エネルギーでなくても放射線として考えられることが多い。また、紫外線も電離作用をもっているが、放射線には含めない。放射線は物質から出るものだけではなく、素粒子、原子核、イオンなどが、ある程度以上のエネルギーの大きさを持っている状態も放射線とよぶことがある。加速器のビーム(電子、陽電子、陽子、重イオンなど)や、それを何かに衝突させて作られたビーム(ガンマ線、パイ粒子、ミュー粒子)なども放射線。また宇宙から降ってくる宇宙線も放射線である。
    放射線は、様々な分野に応用されている。工業分野では、ゴムに照射することによる強度の強いタイヤの製造や、製造された車の内部の検査等多様な用途で使われている。胸部X線撮影をはじめとする医療分野では、ガンの放射線治療や医療衛生器具の殺菌などに放射線が使われている。また、食品の殺菌、滅菌、害虫駆除や品種改良などの生活に密着した分野にも広い範囲で応用されている。


    ま行


    や行


    ら行
    量子ビーム

    量子ビームとは、光子、イオン、電子、中性子、中間子、ニュートリノ等、ビームの一般的総称。加速器や高出力レーザー装置、原子炉等の施設から供給される種々の広範なビームを含む概念。量子力学に密接な関わりを持つ性質から、近年、他のビームとの区別をつけるために量子ビームという名称が付けられた。

     
    レーザー

    誘導放射の原理を利用して光の波の山と谷の揃った単色光を作り出す発光装置、またはその光のこと。語源はLight Amplification by Stimulated Emission of Radiationの頭文字をとったもの。 レーザー光は、高い可干渉性(光の波の山と谷の揃った状態)、時間幅の短いパルス光を作れる事、直進性、単色性(特定波長=色の光だけを作れる事)などの特徴を持つ。可視光領域の電磁波であるとは限らず、紫外線やX線などのより短い波長、また赤外線のようなより長い波長のレーザー光を発生させる装置もある。ミリ波より波長の長い電磁波のものはメーザーと呼ばれる。歯科、近視治療(レーシック)、レーザーメス等の医療分野、測量、送電、核融合等の科学分野、CD、DVD等の情報、家電分野をはじめ、スーパーマーケットのレジで使われているバーコードスキャナーなど身近な技術やレーザーショーなどの娯楽分野から、弾道ミサイルの迎撃などの軍事利用まで幅広く応用されている技術。半導体と並んで量子力学の研究が現代社会にもたらした代表的成果である。また、ビームと混同されがちであるが、その定義は異なり、ビームだからといってレーザーであるとは限らない。

     
    レーザーパルス蓄積技術

    パルス的に発信させ、同じ方向に向かうレーザーを、高反射率のミラーによる発信器の中に閉じ込め反射を繰り返させ、さらに次々とパルスを送り込む。これにより蓄積されたレーザーに、大強度の電子ビームを衝突させることで、大量のX線をつくることができる。世界最高峰と言われるレーザー蓄積装置は、KEKが5年の歳月をかけ完成させたもの。


    わ行


    その他

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